■治水機能(洪水を防ぐこと)を果たしてくれないこと

 このダムが造られようとしている理由の一つは,洪水を防ぐことです。大雨の際に住民の命を守るために必要だとされています。もちろん,洪水を防ぐことは 必要です。でも,このダムを造ることで本当に洪水を防げるのでしょうか?

(1)昭和51年の台風17号の被害の説明のうそ

T 物的被害のうそ

 県は,小豆島町(旧内海町)の沿岸地域を,30年に1度の割合で起こる規模の洪水や、昭和51年災害時規模の降雨により起こる洪水に対して防御する治水対策が必要である,といいます。

 ここで,確認しておくべきことが一つあります。

 昭和51年に台風17号という大きな台風がありました。香川県民の方ならきっと覚えておられることでしょう。県内各地が大雨に見舞われました。小豆島でも,浸水した家屋が721世帯,浸水した面積が48.1ha,被害総額が21億円にのぼったと報告されています。

 このときの被害を説明する資料として,県が配布しているものを紹介します。
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 この図面は,昭和51年の台風17号の災害について説明するために県が小豆島の住民に配布したパンフレットに入っていたものです。青や赤に塗られている箇所がたくさんあります。こんなに大変な被害がありました,それを防ぐには新しいダムが必要です,皆さんの安全を守るためにぜひ協力をお願いします,とい うわけです。

 しかし,この資料は明らかな嘘を書いています。ここでカラフルに塗られている被害のうち,実は,新しいダムを造っても防げないものがたくさん含まれてい ます。それなのに,新しいダムを造ればこれを防げるかのような資料を造っているのです。

 このことは,当時の内海町(現在は小豆島町に統合された)が作成した,災害の記録からわかります。
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 右の写真には「草壁の被害状況」とあります。草壁は,新内海ダムが造られる別当川流域の地名です。土石流に削られた痛々しい状況が記録されています。
 でも,注意して見てほしいのですが,左のページは,「西城川流域」と書かれています。右のページは,「片城川流域」と書かれています。草壁の被害状況の うち,別当川流域での被害状況はこの冊子には何も残されていません。当時の役所が造った資料の中には,別当川の被害はどこにもないのです。

 これを先ほどの図面とあわせて見てみましょう。
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 赤で@と書いてあるところは,西城川の土石流で起こった被害です。少し図面が見づらいですが,このあたりは,西側(地図では左側)から,西城川が別当川 に流れ込んできています。このあたりで青く塗られている被害は,西城川流域を襲った土石流によって起こったものです。

 さて,西城川流域で起こった被害について,別当川の上流にダムを造ることで防ぐことができるでしょうか?

 赤でAと書いてあるところはどうでしょうか。この東側(地図では右側)には,片城川があります。Aの少し北の場所の写真が残っていました。写真の真ん中 に,今にも土石流に流されそうな家があります。その家のまわりの土石流の流れをよく見てください。右から左,すなわち東から西に流れていることがわかると思います。ということは,この地域では,土石流は東から西に,片城川から別当川の方向に向けてあふれています。すなわち,この地域の水害は,別当川ではなく,片城川からあふれたものが多く含まれているのです。

 同じ問題です。片城川があふれたことによる被害を,別当川の上流にダムを造ることで防ぐことができるでしょうか。

 そんなはずはありませんよね。それなのに,県は,これらの被害を,新内海ダムを造れば防げるかのような誤解を与えているのです。おかしいと思いません か?これを元に,県は,新しいダムを造れば費用はかかるけれども,これだけの被害を防ぐことができると言っています。災害による損失を考えれば,ダムの費 用は安いというのです。でも,その災害による損失の算定根拠にうそが混ぜられているのです。

U 人的被害のうそ

 もう一つ,さらに許せないうそがあります。

 香川県議会は,平成21年10月8日に,国に対して,「ダム整備事業の継続を求める意見書」を出しました。その文章を引用します。

「現在の内海ダムが設置されている別当川水系では、昭和49年と昭 和51年に、台風の影響により発生した洪水や土石流災害で、68名もの尊い命と貴重な財産が 失われており、地元住民にとっては、その治水対策の意義は大きなものがあり、早くから要望がなされてきた。」

 ここにははっきりと,「別当川水系」で,「68名もの尊い命」が失われたと書いています。68名もの命が失われた災害を繰り返さないためにはどうしても ダムが必要だというのです。これが事実ならもっともなことでしょう。

 しかし,この水害で,別当川流域では死者は一人もいないのです。 68名というのは,小豆島全域で亡くなった方々の人数です。大変な被害でした。しかし,新内海ダムが造られる別当川流域では,その大水害の際にも誰も亡く なるようなことはなかったのです。

 こんなうそをついて住民や国をだましてまで,県は必要のないダム工事を進めようとしているのです。


(2)ダムの計画案基礎データへの疑問(現在工事中です)

新内海ダムの問題点

新内海ダムの概要
治水機能を果たしてくれないこと




























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